あるコンサルタントが弁護士向けのセミナーで「無理してでも立派なビルに事務所を構えなさい」と言ったのを聞いて、なるほどと思ったことがあります。

そのコンサルタントの理論では「立派なビルに入居していれば、一般消費者は、そこで働く弁護士を立派な先生だと思ってくれる」というのです。

マーケティング理論で言うところの「ハロー効果」というものです。

「ハロー効果」については別の機会に詳しく話しますが、立派なビルに入居していると立派な弁護士だと思われるような効果のことをいいます。

確かにこのコンサルタントの言っていることは、一理あります。

しかし、これがさほどキャリアのない弁護士が一般消費者に自分を立派な弁護士と誤認させるために、意図的にこの手法を使用していたのであれば問題はあると思います。

ただそんなことを言うと弁護士は立派なビルに入居したらいけないのか、ということにもなりますので、ここでは立派なビルに入居していることが優秀な弁護士かどうかの判断基準にはならないことを説明いたします。

超一流企業間の争いとの違い

日本国内でも世界的にも有名な企業の顧問弁護をしている法律事務所は、超一流のビルに入居しているのが一般的です。

大手企業間の交渉では、相手の企業に下に見られないように立派なビルに入居している法律事務所を顧問にしているのです。

世界にある日本の大使館が立派なのもそのためです。相手の国になめられないようにするためです。

企業にも格というのがあり、どこの法律事務所を顧問にしているかでその企業の格がわかります。特に国際的な企業になればなるほどその傾向は強くなります。

しかしそれは何千億円という企業買収や国際的なトラブルが発生する企業の話であって、一般の消費者のトラブルでは、立派なビルに入居しているからといって、それで相手の弁護士がものおじして交渉が有利に運ぶということはありません。

自宅を事務所にしている弁護士

最近では少なくなりましたが、自宅の一部を事務所にしている弁護士もいます。地方の内科や歯医者さんの開業医などもそのような形態が多いと思います。腕一本で食べていける業種は昔は場所とかはあまり関係なくやっていたものです。

実際、自宅を事務所にしている弁護士でも億を超える高額な案件を扱っていたりしますし、地方の優良な中小企業の顧問弁護士だったりしています。

マーケティングの観点から言うと、もっと見栄えのいいビルに入居すれば、インターネットの時代なんだからお客集めも少しは楽になるのに、と思う弁護士にお会いすることがあります。

しかし、古いというと語弊があるかもしれませんが、弁護士はビルで勝負しているんじゃない腕で勝負しているんだ、と思っている弁護士は事務所の見栄えにはあまり気を使わないようです。

入居ビルは判断基準として正しいか

結局、普通の企業や一般消費者に起こりうるようなトラブルでは、立派なビルに入居している弁護士が相手だからと交渉相手の弁護士がものおじすることはなく、立派なビルに入居していることが弁護士の優劣を決める要因にはならないということです。

ですから、弁護士の選択基準として立派なビルに入居しているということはあまり意味がないことだと思います。

立派なビルに入居しているから優秀な弁護士と言い切ることはできません

ただし、立派なビルは比較的利便性の高い、交通の便が良いところにあったりもしますので、何度も法律事務所に行かなければならなくなるような案件であれば利便性という面ではよいかもしれません。

弁護士選びで間違わないように、この情報がよい弁護士の選び方の参考になれば幸いです。